研究内容
劇症1型糖尿病は1型糖尿病のサブタイプで、急激な発症とほぼ完全なβ細胞破壊という特徴を有し、その発症にはウイルス感染の関与が示唆されています。
これまで劇症1型糖尿病患者剖検膵で認められたウイルスはエンテロウイルスのみですが、薬剤性過敏症症候群(DIHS)ではHHV-6やヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の再活性化が認められ、経過中に劇症1型糖尿病を合併した症例報告が散見されます。
今回、血中HCMV抗原陽性のDIHS発症1か月後に劇症1型糖尿病を併発した症例を検討する機会を得ました。
免疫組織化学的検討の結果、HCMV陽性細胞が膵島(α細胞)・外分泌領域に認められ、劇症1型糖尿病患者膵においてエンテロウイルス以外のウイルス感染が初めて証明されました。
さらにHCMV陰性膵島よりもHCMV陽性膵島に多くの炎症細胞の浸潤が認められたことから、β細胞傷害の機序としてHCMV特異的な免疫応答が膵β細胞に波及した可能性が考えられました。
また、HCMV陽性細胞にIRF3(I型IFN産生に必須の転写因子)、一部のα細胞にIRF3、ZBP1(DNAウイルスレセプター)、RIG-I(RNAウイルスレセプター)の発現を認め、代表的な抗ウイルス免疫応答であるI型インターフェロン産生経路の活性化が示唆されました。
RIG-I~IRF3/7経路はエンテロウイルス感染劇症1型糖尿病患者膵でも示されており、劇症1型糖尿病発症においてはウイルス種が異なってもI型インターフェロン産生経路の活性化が共通であることを明らかにしました。
(Yoneda S, et al. A Histological Study of Fulminant Type 1 Diabetes Mellitus Related to Human Cytomegalovirus Reactivation. J Clin Endocrinol Metab. 2017;102(7):2394-2400.)